鈴鹿8耐(5)
ピットで待てども待てども、ペアライダーは戻ってきません。クラッシュによってリタイヤが告げられるチームのアナウンスを聞きながら、ペアライダーを案じていたとき、マシンを押しながらピットに帰ってくるライダーが1人、なんと我がチームのペアライダーです。ぼろぼろになったマシンを必死に押してきています。チームクルーの面々がマシンを受け取ると、ライダーはピット内に疲れてなだれ込みました。私は駆け寄り、声をかけ、体の無事を確認し、一安心しました。さあ、あとはマシンのダメージのチェックです。思ったより損傷がひどく、カウル類はもちろん、フロント廻り、マフラー、クラッチまでぼろぼろでした。エンジンオイルも漏れています。用意していたスペアマシンからパーツを移植する大手術がおわるまでに、約50分を要しました。復旧を終えたマシンに再びペアライダーがまたがり、ピットアウトしていきました。皆の心配のなか、予定の周回をこなしていきます。どうやらマシンは大丈夫そうです。ほっとした私は、いよいよやってくる自分の走行のため、革ツナギに身を包みます。ペアライダーがピットに戻ってきました。燃料補給を終え、マシンを受け取ります。(スプーンコーナーから気の遠くなるほどの距離を、炎天下の中、押して帰ってきてくれたペアライダーの気持ちも一緒に受け取って)